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「それから」は高校生のときから折に触れて読んできた。森田芳光監督の映画「それから」では松田優作が主人公の代助を演じたこともあり、若い頃代助はどちらかといえば自分にとって憧れとなる存在だった。しかし、いつのまにか代助の年齢(30歳)を過ぎ、気がつけば漱石が「それから」を執筆していた年齢(42歳)になって読み返してみると、漱石が代助を見下ろすかたちで、距離を置いて書いていることがよく分かる。三千代もずいぶん落ち着いた大人の女性の印象があったが、23歳くらいでとても若い。 小説の面白いところは、哲学のように、ある思想について述べるのではなく、ある思想をもった人間を現実的諸条件のなかに描き出すことにある。さらにいえば、その思想は、そうした現実的諸条件によって形作られたものかもしれないのである。代助にはそのこと(自分の思想が恵まれた経済的基盤の上に成り立っていること)が見えておらず、作者の漱石にはよく見えている。 「それから」は新聞に連載された新聞小説だが、新聞についての言及も多く、新聞が重要なファクターとして使用されている。新聞で報道されるような社会・経済的な問題(例えば「日糖事件」と呼ばれる汚職事件)が個人の恋愛問題にまで影響を及ぼしている様を漱石は描き出している。 その他にも、「それから」の連載に先立つ新聞小説(弟子の森田草平が自らの心中未遂事件について書いた「煤烟」)との関係、三千代は男性の運命を翻弄する「宿命の女」(あるいは天然!?)なのか等々話題は尽きないが、まずは年齢の話から始めたいと思っている。 2012年5月23日(南日本新聞コラム「南点」掲載) #
by ihara-blog
| 2012-08-11 14:06
| エッセイ
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by ihara-blog
| 2012-07-12 08:00
| 研究活動
小林潤司(鹿児島国際大学教授)と井原慶一郎(鹿児島大学教授)が案内役を務め、テーマによっては特別ゲストを招きます。司会や進行協力には、小林ゼミと井原ゼミの学生たちが当たります。 4thシーズンのテーマは「本を開けば、旅」。6月10日に有川浩の『阪急電車』でスタートします。 6月10日(日)有川浩『阪急電車』(幻冬舎文庫版) 6月30日(土)夏目漱石『草枕』(小学館文庫版) *特別ゲスト 村瀬士朗氏(鹿児島国際大学准教授、日本近代文学専攻) 7月7日(土)カズオ・イシグロ『日の名残り』(ハヤカワepi文庫版) 時間はいずれも午後2時~4時。場所はマルヤガーデンズ7階のgarden7です。 ご参加になりたい回の前日までに、お電話またはメールでご予約ください(定員30名)。1回の参加費500円(ドリンク・茶菓付)は当日、受付でお支払いください。なお、ジュンク堂書店のレシート、ブックカバーまたは買物袋をご呈示の方は、参加費を400円に割引いたします。受付は開始時間の30分前に開始します。 電 話 099 (813) 8108(マルヤガーデンズ事業部) メール gardens.bungaku*gmail.com ←ご送信の際は「*」は「@」に変えてください。 企画・運営 鹿児島国際大学国際文化学部 小林潤司研究室 + 鹿児島大学法文学部 井原慶一郎研究室 #
by ihara-blog
| 2012-05-20 14:15
| 文学カフェ
『南日本新聞』のコラム「南点」にエッセイ(全12回)を連載します。掲載予定日は、1/18、2/1、2/15、2/29、3/14、3/28、4/11、4/25、5/9、5/23、6/6、6/20(すべて水曜日、2週間おき)です。
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by ihara-blog
| 2012-01-13 21:30
| 研究活動
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